北海道登別市にある郷土資料館にはアイヌ民族の装飾品が展示されています。
そのうちの2点が展示ケース内からなくなっていたことが最近になって明らかになりました。
実はこの装飾品は、知里真志保というアイヌ民族の言語学者の遺品だったそうです。
この事件の詳細を解説するとともに、本当に盗難なのかについても考察してみます。
何があったのか?
登別市の郷土資料館に展示中だった装飾品がなくなっているのを職員が発見したのは、2016年1月19日のことだったそうです。
なくなっていたのは、アイヌ民族の耳飾り1組と首飾り1つとのこと。
これら2点は当時ガラスケースに入れて展示中だったそうですが、ケースには当然鍵がかかっており、職員が発見したときにもやはり鍵は閉まったままだったそうです。
こういう展示品の周囲には防犯カメラがついているのが普通ですが、現場には防犯カメラがなかったといいます。
そのため、正確にいつから装飾品がなくなっていたのかはわからず、随分前から消失していた可能性もあるとのことです。
展示されていたのは、知里真志保博士の遺品だったといいます。
知里真志保とは誰か?
おそらく普通の人は、知里真志保(ちり ましほ)という名前を聞いたことがないと思います。
彼は1909年2月24日に登別で生まれたアイヌ民族出身の言語学者です。
著名なアイヌ語研究者である金田一京助の弟子として活躍し、アイヌ研究に多大な貢献をなした人物だといわれています。
ちなみに、金田一京助はかの名探偵金田一耕助の名前の元ネタとなった人物ですね。
金田一京助をテーマにした書籍に名前が出てくることもあるので、読書家なら知っている人もいるかもしれません。
アイヌ民族出身者としてアイヌ民族を研究していた、まさに第一人者ですから、今回消えた装飾品も学術的に貴重なものだったのだと思います。
登別郷土資料館について
この郷土資料館は北海道登別市片倉町にあります。
道央自動車道のすぐそばですね。
立地条件は悪くなさそうですが、登別市を訪問する観光客が郷土資料館を見学するかというと、ちょっと怪しいところですね。
おそらく入館者数はそれほど多くないと想像します。
人目が少ないのであれば、展示品が盗み出されるチャンスもあったでしょうね。
警察もそう考えて窃盗事件として捜査しているみたいです。
本当に窃盗なのか?
しかし気になるのが、展示品がガラスケースに収納されており、それには鍵がかかっていたということです。
これが本当であれば、鍵を持っていない観光客などが装飾品を盗み出すのは無理でしょう。
したがって、犯人は鍵を使用できる人間、内部犯ということになりそうです。
内部犯なら、学術的興味からアイヌ民族の装飾品を盗み出すこともありうるかもしれません。
しかし、内部犯だと考えると、本当に「窃盗」なのかどうか疑わしくなりますね。
むしろ装飾品は別の場所に移動していただけで、職員間の連絡不備にすぎないのではないかという気もします。
鍵のかかったケースから金銭的価値がほとんどない装飾品が盗まれたと考えるよりも、そういう他愛もない理由のほうがありそうな気がするのですが……。
まあ、もしもそういう理由なら、すぐに警察が気づくでしょうから、今頃になって事件が報道されたとなると、やはり窃盗なのでしょう。
ただし、金銭目的ではなく、たとえば「職員が展示品を壊してしまったから、やむをえず隠した」みたいな、金銭以外の理由があったのではないかと推測します。
おわりに
鍵のかかったケース内から物が消えるなんてミステリーみたいですが、現実には凝ったトリックなんて使われませんから、まあ内部犯が有力ですよね。
警察が一日も早く消失した装飾品を発見してくれることを願うばかりです。