雪道は4WDが必要!北海道民が四輪駆動車を購入する理由とは?

北海道の車の主流は四輪駆動(4WD)です。道民なら誰に聞いても、「雪道を走るなら4WDがいい」と勧めてきます。

このことは数字にも現れています。たとえば、四輪駆動車が生産車両の約94%を占めるスバルの新車販売台数におけるシェアは、北海道などの雪国だと全国平均よりも遥かに高いです。北海道と全国平均を比較すると、約23%も上回っています。

なぜ北海道民はこれほどまでに4WDを購入しているのでしょうか?

雪道ではFRやFFなどの二輪駆動車(2WD)だとダメなのでしょうか?

この記事では、こうした疑問について道民目線でしっかりと解説していきます。

雪道で4WDが必要な理由とは?

結論から言うと、道民が4WD車を選ぶのは雪道での発進時にグリップ力が違うからです。2WDだとタイヤが空転してしまうような路面状況であっても、4WDなら地面をグリップしてうまく走行できます。

北海道は雪国であり、気温も非常に冷え込みます。常に0度を下回る状態です。したがって、路面状況の悪さも本州の比ではありません。「スケートリンクのように凍結した路面を走行する」ような状況が頻繁に発生するのです。

特に問題となるのが、停車状態からの発進時です。信号待ちの場合が典型例ですね。凍結路面での発進は注意しないとすぐにタイヤが空転してしまいます。停車場所が坂道だった場合は特に最悪です。スリップすると大変な事故に繋がります。

4WDはこのような場面で威力を発揮します。4つの車輪のどれかが路面をグリップすれば発進できるからです。

北海道で生活しているとすぐにわかりますが、信号待ちから発信するときにタイヤを空転させている車は結構います。信号待ちからスムーズに発進できないのは、恥ずかしいだけでなく後続車の迷惑にもなります。発進できずにモタモタしていると、すぐに後ろが渋滞するからです。雪で道路幅が狭くなっていることも多いので、後続車が安易に追い越すこともできません。結局また信号が赤に変わってしまう、なんて場面も目にします。よく観察してみると、そうした車の多くは2WD車です。

北海道で生活しているとこういうシーンはよく目にします。だからこそ北海道民は4WDを選ぶのです。

雪道に4WDは不要という意見も?

ところが世の中には、これと反対の見解を主張する人もいます。「雪道走行するときでもわざわざ4WD車にする必要はない、2WDで十分だ」というのです。

以下では、この意見について道民の立場から検討してみます。

四輪駆動(4WD)の特徴

まずは四輪駆動(4WD)の一般的な特徴を、普通の乗用車と比較して確認しておきましょう。

四輪駆動とは?

四輪駆動(4WD)とは、前輪と後輪の4つの車輪にエンジンの力を伝えて駆動する仕組みを持った自動車のことです。”4-Wheel Drive”を略して4WDと一般的に呼ばれます。欧米では、全輪駆動”all-wheel drive”(AWD)と呼ばれることもあります。

一方、普通の乗用車は二輪駆動車(2WD)が多いです。2WDは前輪また後輪のどちらか2つの車輪だけが駆動するタイプの車です。前輪が駆動するタイプをFF(”Front engine, Front drive”)、後輪が駆動するタイプをFR(”Front engine, Rear drive”)と呼びます。2WDのうち主流なのがFFです。

四輪駆動のメリット

主流であるFFと比較した場合の4WDのメリットは、悪路走破性にあります。車輪がそれぞれ駆動するので、4つのうち1つでも地面をグリップできればそれで走行できるからです。

雪道の他に泥濘地などでも効果を発揮します。

四輪駆動のデメリット

逆にFFと比較した4WDのデメリットとしては、車輪すべてに力を伝えるための構造が複雑で重量が重くなる、路面をよくグリップすることの代償として燃費が悪くなる、といった点が挙げられます。

雪道での4WD不要説の理由

以上の特徴を踏まえた上で、雪道に4WDが不要だという見解の理由を見ていきます。私が知るかぎり、ネット上には次のような意見があるようです。

  1. 燃費が悪い
  2. 除雪がしっかりされている
  3. 北海道の車すべてが4WDではない
  4. バス、タクシー、トラックは4WDではない
  5. 4WDはドライバーが過信しやすいので危険
  6. 走行中や停車するときには4WDでも意味がない

それぞれの理由について検討し、反論を加えていきます。

4WD不要説への反論

以下、不要説の詳細とそれへの反論です。

1.燃費が悪い

これは四輪駆動のデメリットとして書いた通り事実です。路面をよくグリップするということは、その分だけ大きな抵抗を受けます。ですから車体を動かすためにFFよりも多くの燃料が必要になるわけです。

しかし最近の4WD車はきちんと電子制御されており、普段はFFで動きながら、タイヤがスリップして空回りしたときだけ自動的に4WDへと切り替わる仕組みになっているのが主流です。常に四輪駆動で走るフルタイム式と比較すると、燃費の問題は10%ほど改善されています。

それに多少燃費が悪かったとしても、雪道で立ち往生する危険性を考えたら些細なデメリットです。信号待ちのたびに進まなくなるストレスに比べたら、なんてことありません。

2.除雪がしっかりされている

これを理由に挙げた人は、100%雪国暮らしの経験がない人です。レジャーでスキー場に行くくらいしか雪に接する機会がないのでしょう。雪国の実態を知らないのが丸わかりです。

北海道は四六時中雪が降っているので、200万人近い道内最大の人口を誇る札幌市ですら除雪が追いつかずに四苦八苦しています。自治体の負担する除雪費用も膨大です。除雪がしっかりされているとはとても言えません。

そもそも除雪したからって滑らなくなるわけではありません。積雪がなくてもブラックアイスバーンでツルツル路面になることはよくあります。そして雪が積もっているよりもそちらのほうが危険なのです。

3.北海道の車すべてが4WDではない

もちろんすべての車が4WDというわけではありません。それは事実です。二輪駆動のFFで生活している人もいます。

しかしそういう人が4WDを不要だと考えているわけではありません。「本当は4駆が欲しかったけど、値段が安かったから中古のFFにした」という私の父親のようなケースもあります。FFに乗って不便を感じていないわけではないのです。

実際に私の父親は、あまりに不便だったので数年後4WDへ買い替えました。私にも口を酸っぱくして「買うなら絶対4WDにしろ」と言ってきます。経験者は語る、というやつです。

4.バス、タクシー、トラックなどは四輪駆動ではない

たしかに北海道のバスやタクシー、トラックの主流は四輪駆動ではありません。これは事実ですね。

しかしこれも、便利だから二輪駆動車を運転しているわけではありません。むしろタクシー運転手などは常に愚痴をこぼしています。北海道で生活していれば分かりますが、冬場のタクシーの運転は本当に怖いですよ。頻繁に滑ってます。客商売なのに路面状況の影響をモロに受けていて、見ているだけで気の毒です。

そもそもこれらのドライバーは二種免許等を持った運転のプロです。仕事時間の多くを運転に費やしており、運転への習熟度が一般ドライバーとは比べ物になりません。運転のプロが四苦八苦しているのですから、一般ドライバーの我々は素直に4WD車を選択するべきなのです。

なお私の知人のタクシードライバーは、仕事以外だと4WDに乗っていることも付け加えておきます。

5.4WDはドライバーが過信しやすいので危険

これは4WD車のドライバーが車の性能を過信して、雪道なのに乱暴な運転を行いがちだという指摘です。これは一理あります。

北海道の雪道では、常にスリップの危険を考えて慎重に運転することが求められます。発進時にはタイヤが空回りしないようにゆっくりとアクセルを踏みますし、カーブを曲がる際にも普段よりスピードを落とさなければなりません。急ブレーキなんてもっての外です。

ところがドライバーの中には、4WDの性能を過信して、乱暴に運転する人がいるわけです。いくら悪路走破性能がいいとしても、乱暴な運転をしたらやっぱり滑って事故を起こすよ、というわけことですね。

これ自体は重要な指摘ですし異論はありませんが、だからといって4WD不要論にはつながりません危険なのはドライバーの意識であり、必要な対策はドライバーへの啓蒙です。雪道において4WDの方が優れていることと、それを過信したドライバーが事故を起こすことは全く別の問題です。

6.走行中や停車時には4WDの必要性がない

走行時の姿勢制御や停車するときのブレーキのかかり具合は、たとえ4WDでも優位性がないので無駄だという指摘です。

これはたしかにそのとおりでしょう。道民として実際に運転していますが、走行中や停車するときになにか良さを感じることはありません。

しかし北海道の雪道で4WDが必要になるのは、あくまでも発進時にスタックしないようにするためです。吹雪のときにスタックすると脱出に苦労します。それを回避するためにこそ四輪駆動車に乗るわけです。

それ以外の場面で優位性がないからといって必要性がないとはいえませんし、道民は別にそんな効果を期待して四駆を購入しているわけではありません。

まとめ

4WDは特に滑りやすい路面での発進時に、通常のFF車よりも路面をグリップしてくれます。両方を乗り比べればその違いは明白です。北海道でやむを得ず2WD車を運転している人でも、可能なら4WDにしたいと考えています。

それがわかっているからこそ北海道民は優先的に4WDを購入するし、他人にも勧めるわけです。4WD不要説は雪国の路面状況を知らない人の戯言だと思います。

なお、以上のことはスタッドレスタイヤを付けていることが当然の前提です。北海道民で冬場にスタッドレスタイヤに変えない人は存在しません。スタッドレスタイヤとタイヤチェーンについては、こちらの記事でも取り上げています。

⇒ チェーン規制時にスタッドレスではダメ?北海道民が着用義務化に困惑する理由

もちろん今現在FF車を運転している人に対して、「2WDはまったく使えないからすぐに買い換えろ!」とまでは言いません。さすがにコストが大きすぎますから。とはいえ、どちらが便利なのかは明白です。

現在人の生活に冷蔵庫が必要なのと一緒です。ライフスタイルによっては「自炊しないから冷蔵庫など不要!」という人もいるでしょう。しかし、大抵の人にとってはあった方が便利だし、他人にも勧めます。そういうことです。

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