北海道の春が深まり、爽やかな初夏へと移り変わる季節。そんな時期に、北海道、特に札幌などの道央圏でよく聞かれるのが「リラ冷え(りらびえ)」という言葉です。
美しいライラック(リラ)の花が咲き誇る頃に、まるで冬に逆戻りしたかのような肌寒さを感じることがあります。
この記事では、北海道特有の気候現象である「リラ冷え」とは一体何なのか、いつ頃、なぜ起こるのか、そしてこの時期に北海道旅行を計画している方が気になる服装のポイントなどを詳しく解説していきます。
「リラ冷え」とは?北海道特有の爽やかな季節に訪れる寒の戻り
「リラ冷え」とは、主に北海道でライラックの花が咲く5月下旬から6月上旬にかけて、一時的に気温が下がり、肌寒くなる現象を指す言葉です。
新緑が目に眩しく、本来であれば暖かさが増していく時期に訪れるため、少し意表を突かれるような寒さに感じられます。
特に札幌市を中心とした道央圏でよく使われる表現で、地元の人々にとっては季節の風物詩のようなもの。単に気温が低い日というだけでなく、ライラックの開花という美しい季節の象徴と結びついた、北海道ならではの気候の特徴と言えるでしょう。
この時期の寒さは、真冬のような厳しさとは異なりますが、日中でも上着が必要になることがあります。
リラ冷えはいつ頃?時期と気象的な原因
リラ冷えが顕著になるのは、例年5月下旬から6月上旬にかけてです。ちょうど、札幌ではライラックが見頃を迎える時期と重なります。
この現象の主な気象的な原因とされているのが、オホーツク海高気圧の影響です。
この時期、日本の北東海上にあるオホーツク海上で冷たく湿った高気圧が発達することがあります。この高気圧から北海道に向かって冷たい北東気流(やませ)が流れ込むと、気温の上昇が抑えられ、時にはぐっと気温が下がり、曇りや霧雨のぐずついた天気をもたらすのです。
「やませ」が吹くと、日中でも気温が上がらず、じっとりとした体感の寒さになることもあります。
リラ冷えの程度は年によって異なり、ほとんど感じられない年もあれば、数日間肌寒い日が続く年もあります。
通常のこの時期の北海道(札幌)の日中の最高気温は20℃前後まで上がることが多いですが、リラ冷えの際には日中でも15℃を下回ったり、風が強い日には体感温度がさらに低く、時には10℃近くまでしか上がらなかったりすることもあります。
この気温の変動に対応できる準備が必要です。
なぜ「リラ」冷え?美しいライラックとの関係
「リラ」とは、フランス語でライラック(Lilac)を意味する言葉です。

その名の通り、「リラ冷え」は、北海道でライラックの花が咲き誇る時期に起こる寒さであることから名付けられました。ライラックの甘い香りが漂い始める頃に、ふと寒さを感じる、そんな季節感を的確に表した言葉と言えます。
札幌市の木にも指定されているライラックは、5月中旬頃から紫や白の美しい花を咲かせ始め、街を彩ります。特に大通公園で開催される「さっぽろライラックまつり」は、多くの市民や観光客で賑わう初夏の一大イベントです。
この美しい花の季節と、時折訪れる肌寒さが結びつき、「リラ冷え」という情緒ある言葉が生まれたと考えられています。
調べてみると、1960年代から俳人の榛谷美枝子さんが季語として使い始めたものが、北海道出身の作家である渡辺淳一さんの小説『リラ冷えの街』(1971年)によって広まったのだとか。
昔からある表現なのかと思っていましたが、意外と新しい言葉なのですね(それでも半世紀以上ですが)。
リラ冷えの時期の北海道旅行:服装選びのポイントと注意点
5月下旬から6月上旬に北海道旅行を計画している方は、この「リラ冷え」を考慮した服装準備が大切です。具体的なポイントを見ていきましょう。
重ね着が基本
リラ冷えの時期は、1日の間でも、また日によっても気温の変動が大きいのが特徴です。日中は日差しがあれば暖かく感じても、朝晩はぐっと冷え込んだり、曇りや雨の日は日中でも肌寒かったりします。
そのため、長袖シャツの上にカーディガンやフリース、さらに薄手のジャケットやパーカーを重ねるなど、簡単に脱ぎ着して体温調節ができる服装が非常に有効です。室内と屋外の温度差にも対応しやすくなります。
羽織るものを必ず用意
たとえ天気予報で最高気温が高めでも、リラ冷えの可能性を考慮し、すぐに羽織れる上着は必ずバッグに入れておきましょう。
特にウィンドブレーカーのように風を通しにくい素材のものは、体感温度が下がるのを防ぐのに役立ちます。小雨程度なら対応できる撥水性のあるものだとさらに安心です。コンパクトに畳めるタイプなら持ち運びも苦になりません。
油断は禁物
本州(特に太平洋側)ではすでに初夏の陽気で半袖で過ごせる日も多い時期ですが、北海道では気候が異なります。
「もう6月だから暖かいだろう」という思い込みは禁物です。リラ冷えをもたらすオホーツク海高気圧の影響は変わりやすく、数日前までは暖かくても急に肌寒くなることもあります。
出発前だけでなく、旅行中もこまめに最新の天気予報を確認し、服装を調整する意識が大切です。
足元の冷え対策も
意外と見落としがちなのが足元の冷えです。特に雨の日や風が強い日は、地面からの冷えが伝わりやすくなります。
スニーカーなど歩きやすい靴を選ぶのはもちろんですが、少し厚手の靴下を用意したり、冷え性の方は薄手のタイツやレギンスをズボンの下に履いたりするのも良いでしょう。防水性のある靴を選ぶと、天候が悪化した場合でも快適さが保てます。
天気予報を確認し、調節しやすい服装を心がけることで、リラ冷えの時期でも快適に北海道観光を楽しむことができます。
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リラ冷えがもたらす影響とは?
リラ冷えは、意外と様々な面に影響を与えます。
体感的な影響
最も直接的な影響は、やはり体感温度の低下です。日中でも思ったより気温が上がらず、日差しがないと半袖では肌寒く感じることが多くなります。
屋外での観光や散策時には、暖かい飲み物が欲しくなったり、予定していたよりも早く屋内施設に入りたくなったりするなど、行動計画にも影響が出ることがあります。
住んでいる我々にも難しいのですから、北海道旅行に来た人が服装選びに悩むのも当然ですね。
生活への影響
北海道の家庭では、一度片付けた暖房器具をリラ冷えの時期に再び出すことも珍しくありません。特に朝晩の冷え込みが厳しい場合や、寒さが数日間続く場合には、ストーブやヒーターが活躍します。
本州の感覚からすると驚くかもしれませんが、道南に位置する函館ですらよくあることです。これも北海道の気候に対応した生活の知恵ですね。
農作物への影響
農業が盛んな北海道にとって、この時期の低温は無視できない問題です。特に、気温が氷点下近くまで下がる「遅霜(おそじも)」が発生すると、畑作物や果樹の新芽や花がダメージを受け、その後の生育不良や収穫量の減少につながる可能性があります。
農家の方々にとっては、天気予報を注視し、対策を講じる必要がある、気の抜けない時期でもあります。
ポジティブな側面も?
必ずしもネガティブな影響ばかりではありません。リラ冷えをもたらす冷たく乾燥した空気は、空中の水蒸気やチリを少なくし、空気を澄み渡らせる効果があると言われています。
そのため、遠くの山々が普段よりくっきりと見えたり、夜空の星が綺麗に見えたりすることがあります。雨上がりのリラ冷えの日などは、特に空気が洗われたように感じられ、清々しい気分を味わえるかもしれません。
このように、リラ冷えは単なる寒さではなく、北海道の自然環境や人々の生活、産業にも関わる、この地域特有の気象現象なのです。
まとめ
北海道の初夏に訪れる一時的な寒の戻り、「リラ冷え」。ライラックが美しく咲く時期特有のこの現象について、その意味や時期、原因、そして旅行時の服装の注意点などを解説しました。
北海道ならではの季節の移ろいの一つであるリラ冷えを理解し、しっかりと準備を整えることで、この時期ならではの爽やかな北海道の魅力を満喫できるはずです。旅行前には最新の天気予報をチェックして、快適な旅を楽しんでくださいね。