エサンベ鼻北小島が猿払村沖から消失?その原因と領海縮小後の対応を考察

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現在、日本の領海が狭くなるかもしれないというニュースが流れています。

日本は島国ですから国土全体を海に囲まれています。そのため経済的にも安全保障的にも領海の広さは死活問題です。

このような問題が浮上した原因は、北海道にある無人島「エサンベ鼻北小島」にあります。この島が消失した可能性があると報告されたのです。

島が消失するとはいったいどういうことなでしょうか?

この記事では無人島消失の原因と、それによって領海が縮小した場合の対応について解説したいと思います。

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エサンベ鼻北小島とは?

エサンベ鼻北小島とは、北海道猿払村沖にある無人島です。平均海面から1.4mの高さがあることが、1987年(昭和62年)の測量によって確認されました。

この島の存在は昔から知られていましたが、名前がついたのは比較的最近のことです。2009年に決まった「海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針」に従って、2014年になってから名称が決定されました。

これは中国の海洋進出の影響や隣国との領土問題などが起こり、領海の範囲確定と無人島の日本領への帰属を明確化する必要が強まったからだと思います。

ちなみに島の定義について、国連海洋法条約121条は以下のように規定しています。

第121条 島の制度
1 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう。
2 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。
3 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

つまり、このような「島」と呼べるためには、次の条件を満たしている必要があります。

  • 自然に形成された陸地
  • 水に囲まれている
  • 満潮時にも水面上にある

もしも満潮時に島が水没していたならば、3番目を満たさないので「島」とは認められなくなります。その分だけ、日本の領海も狭くなります。

エサンベ鼻北小島の地図上の場所

次にエサンベ鼻北小島の場所を確認しておきましょう。

島の場所は北海道猿払村沖約500m地点になります。地図上では下記の地点ですね。

エサンベ鼻北小島の面積は?

1987年に測量された時点で、面積は約330平方メートルでした。我々に馴染みのある土地の単位に換算すると、約100坪=約200畳ですね。

畳200枚分ともなれば相当な広さに感じます。100坪の土地があれば普通に家が立ちますね。

私の周りでは「単なる岩だったんじゃないの?」なんて言っている人もいましたが、家が立つレベルの広さならば、単なる岩だとはとても言えないように思います。海図や国土地理院の地図に掲載されるに足るだけの規模があったのです。

エサンベ鼻北小島が消失した原因は?

現在はまだ消失したことが確認されたわけではないものの、2018年に入ってからは「発見できなかった」という証言が続々と出てきています。地域住民から通報が入るくらいですから、陸地からはまったく見えないのでしょう。

さらに、2018年11月1日には第1管区海上保安本部が航空機から目視したが確認できなかったそうです。ですから、消失している可能性は高いと思われます。

ではいったいなぜ、一つの無人島が消失してしまったのでしょうか?

原因として考えられるのは、波や流氷による侵食です。

猿払村沖は北海道の北端に近く、毎年冬には流氷がやってきます。この流氷による侵食で海上にあった陸地部分が削り取られてしまった、ということです。

観光資源として貴重な流氷ですが、こういう事態になるととても恨めしい存在に変わりますね。日本の領海を削り取るとは……。

領海が減ると何がまずいのか?

ここで次のような疑問を持つ方がいるかも知れません。

「領海が減ると何がまずいの?」

この疑問についてはっきりさせておきます。

まず領海は主権の及ぶ範囲です。日本の法律が適用されますし、外国の船舶は許可なく入ることができません。要は日本の支配領域です。これは単に海上だけでなく、その上空も含まれます

これが狭まると、外国の船舶や航空機が自由に入れる範囲が広がる=日本の陸地に接近可能になるわけです。平時ならまだしも、日本に敵対的な勢力が存在する場合、その勢力が日本を攻撃することが容易になります。これが安全保障上大きな問題であることは自明ですよね。

また島の消失による領海縮小は、同時に排他的経済水域の縮小も意味します。

領海や排他的経済水域内では、沿岸国が自由に海中資源や海底・地下資源を開発活用することができます。その範囲が狭まることは、漁業や資源開発に制限をかけられるようなものです。これは経済的な打撃になります。

エサンベ鼻北小島は猿払村沖500mという話ですから、日本の主権の及ぶ領域や資源開発可能な領域が500mも狭まるということです。

無人島が1つ消えることのインパクトがおわかりいただけるかと思います。

今後の対応策は?

今回の事態を受けて、小樽の第1管区海上保安本部は流氷がなくなる時期まで待ってから、改めて測量を行う予定だそうです。今の時期だと流氷が邪魔で測量できないのですね。

もちろん測量はやるべきです。もしも満潮時に見えなくなるだけで、低潮時には海面に出ているのであれば、「低潮高地」として領海の範囲を決める起点に用いることができます。

国連海洋法条約13条1項は次のように定めています。

第13条 低潮高地
低潮高地とは、自転に形成された陸地であって、低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水中に没するものをいう。低潮高地の全部又は一部か本土又は島から領海の幅を超えない距離にあるときは、その低潮線は、領海の幅を測定するための基線として用いることができる。

要するに、陸地に近くて低潮時には海面に出ているならば、「領海の幅を測定するための基線として用いる」ことができるのですね。これが認められれば領海の範囲が狭まらないかもしれません。

しかしそれだけでは足りません。必要ならば保全策を実施する必要があるかと思います。

それもエサンベ鼻北小島だけではありません。

他の「日本の排他的経済水域等の外縁を根拠付ける離島」についても、このような消失が起こっていないかを確認しなければならないでしょう。その上で消失の危険性のある無人島については、早急に保全策を実施しなければならない。

現在、北海道地域に属している「日本の排他的経済水域等の外縁を根拠付ける離島」は、エサンベ鼻北小島以外に14あります。


引用元:領海の外縁を根拠付ける離島の地図及び海図に記載する名称の決定について

直接流氷の影響を受けそうなのはエサンベ鼻北小島くらいですが、波による侵食はどこでも起こりえます。そして起こってからでは遅いのです。

もちろん、これくらいのことは日本政府もわかっています。にもかかわらず手を付けられなかったのは、優先順位と予算の問題でしょう。

理屈としては、陸地からもっと離れている場所にある島のほうが領海の範囲を最大化します。ですからエサンベ鼻北小島は後回しにされていたのだと思います。

しかしこういう事態が起こっては、もはや先延ばしにするべきではないでしょう。他の地域も含めて、速やかに予算をかけてでも保全策を実行すべきです

まとめ

  • エサンベ鼻北小島は領海や排他的経済水域を決める基点となる島。
  • 消失の原因は流氷と波による侵食の可能性が高い。
  • 他の無人島も確認し、必要なら保全措置を取る必要がある。

本当に予算をかけるべきなのは、こういう場所だと思います。もちろん他の経済政策なども重要ですが、無人島は一度失ったら元に戻らないので緊急度が高いです。

問題は山積みですが、ひとつずつ解決していくしかありません。

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