いよいよ北海道新幹線が今週末3月26日土曜日に開業します。
北海道では様々な記念イベントが開かれたり、各企業や自治体の新製品開発がニュースになっており、ある種のお祭りムードです。
しかし、その一方で気になる数字もしきりに報道されています。
中でも衝撃的なのが北海道新幹線の予約率の低さです。
3月中旬の段階でいまだに新幹線の予約率が25%程度だというのですね。
当たり前ですが、この予約率が続くようであればJR北海道に大幅な赤字が発生することになります。
いったいなぜ、こんな事になってしまったのでしょうか?
北海道新幹線の不人気の理由を考えてみます。
目次
そもそも本当に赤字になるのか?
しかし話の前提として、そもそも本当に北海道新幹線が不人気なのかについて考えておく必要があります。
予約率が低いまま改善されないのなら赤字になるかもしれませんが、今後予約が増えればその限りではありません。
また、予約をしないで新幹線に登場する乗客が多ければ、予約率が低くても採算がとれる可能性は十分にあります。
今後予約数が増えるか?
まずは今後予約数が増える可能性があるかどうかについてです。
結論から言えば、あまり期待できないのではないでしょうか。
なぜなら、通常新幹線の開業直後はもっとも人気が高まるであろう時期だからです。
テレビや雑誌などメディア露出がかつてないほど増える時期なのですから、通常よりも注目されてしかるべきでしょう。
にもかかわらず予約率がこの程度だとすると、おそらく今後も大幅な改善は見込めないと思われます。
もちろんGWなどの期間中にはある程度増えるかもしれませんが、平時は全く期待できそうにないですね。
予約しないで搭乗する乗客が期待できるか?
新幹線は、急な出張など事前予約をしないで登場する人も結構多いです。
そのため予約率が低くてもあまり気にすることはない、という見方もあるかもしれません。
しかし本州とは違って、北海道新幹線はまずビジネスで使われたりしないでしょう。
なにしろ新函館北斗駅のある北斗市も、道南最大の都市である函館市も、大した仕事のない地方都市であり、本州からわざわざビジネスマンが仕事で来たりする場所ではないからです。
おそらく函館に来る人=北海道新幹線の乗客はあくまでも観光客がメインです。
そしてそういう人たちは、急に予定を決めるのではなく、きちんと事前に予約をしてから搭乗するでしょう。
まして北海道新幹線は、もっとも運賃が高い路線です。
普通の人は、せめて早期予約による割引価格を狙うと思います。
したがって、予約しないで搭乗する乗客もあまり期待できないでしょうね。
このように北海道新幹線は、高い確率で赤字に陥ると思われます。
北海道新幹線が不人気な理由は?
では、北海道新幹線が不人気な理由は何なのでしょうか?
私が思うに、最大の理由は飛行機の方がはるかに便利だからでしょう。
そもそも函館には駅前からバスで30分以内の場所に空港があります。
飛行機の所要時間の短さに加えて、空港から市街地までの移動も簡単なのです。
また、飛行機は早期予約割引を利用すると新幹線よりも安くチケットを購入できます。
実は北海道新幹線の時刻表が本日の北海道新聞に折込まれていたのですが、それによれば早期予約をしても料金が1万7~8千円程度にしかならないそうです。
時期にもよりますが、飛行機はそれよりも安い金額でチケットを取れます。
利便性でも価格面でも飛行機のほうが優れている以上、高所恐怖症など何らかの事情があって飛行機を利用できない人以外は新幹線に乗ろうと思わないでしょうね。
ある意味、シンプルでわかりやすい理由ですが、だからこそ深刻です。
JR北海道は当初から赤字を予想していた?
実は北海道新幹線は、当初から赤字になることが予想されていました。
2015年10月時点の新聞報道によれば、JR北海道が出した北海道新幹線の収支見通しは毎年約50億円の赤字になるそうです。
ということは、現在の状況もJR北海道の想定内だと考えても良さそうですね。
まあ、黒字に転換する見込みは全くないんですけどね。
こういう予想があるのになんで新幹線を作ろうと思ったのか不思議なくらいです。
人口が増加しているならともかく、札幌以外は全体的に過疎化している北海道にわざわざ新幹線を伸ばす必要なんてありませんよね。
2017年追記:開業初年度の利用者数は予想以上!なのに赤字
2016年の開業から1年間が経過し、2017年3月25日までの丸1年間の利用者数が確定しました。
それによると、利用者数は229.2万人、1日あたり約6300人とのこと。これは事前の想定だった1日あたり5000人を超えたものでした。この数字だけ見ると「北海道新幹線大成功じゃないか!」「予約の少なさなんて問題なかったんだ!」と思うかもしれません。
ところが収支を見てみると、予想以上の利用者数だったにもかかわらず1年間で約54億円の赤字です。利用者が多いのに、予想されていた収支見通しよりも悪いです。
まあ、どうあがいても赤字になるという予想だけは当たってしまったので、なんだか切ない気分になります。
2018年追記:2年目は100億円以上の赤字
初年度は思ったより利用者が多かったものの、結局は予想通りに50億円以上の赤字となってしまった北海道新幹線。2018年3月期の連結決算によると、今年は昨年の倍である100億円の営業赤字を出したそうです。
開業効果がなくなって利用者が減ったことが響いたみたいですが、それ以上にインフラ修繕費が膨れ上がったのが原因みたいですね。青函トンネルは貨物列車も通りますし、老朽化もある上に保守の難しい海底トンネルですからね。費用がかさむのも当然ではあります。それが想定以上だったことが問題のようです。
また、北海道新幹線の利用客の目的を調べた研究も出ているようですが、ビジネス目的の客はやはり2割以下と少ないみたいです。この記事でも書きましたが、函館までビジネスで来る人なんてあまり多くありませんからね。当然の結果です。
それにしてもこれだけ赤字が続いて大丈夫なのでしょうか。関連事業で旅客事業を支えるというビジネスモデルも難しくなってきているとなると、本当に赤字経営を改善できるのか気になります。
おわりに
この記事にかぎらず、このブログでは北海道新幹線に対して割と悲観的なことを語ってきました。
しかしもう建設してしまった以上は、いち函館市民として北海道新幹線には成功して欲しいです。
私の稚拙な予想(と、JRの採算見通し)を超えて多くの人々が北海道に来てくれることを願っています。
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