北海道の老舗スーパー「スーパーチェーンシガ」がアークスに買収されるというニュースが出ていて驚きました。
店舗及び事業を取得するという話ですが、要は買収ですよね。
「スーパーチェーンシガ」といえばチラシや販売戦略に独自性があって話題になっていた店です。
消費税率引き上げのあたりから雲行きが怪しくなっていましたが、ついに事業売却してしまったのですね。
そうなると気になるのが、現在の店舗や従業員がどうなるのか、販売戦略に変化があるのかです。
個人的に気になったので調べてみました。
そもそも「スーパーチェーンシガ」とは?
おそらく北海道外の人は知らないと思いますから、基本的なところを説明しておきます。
「スーパーチェーンシガ」は北海道余市町に本社があるスーパーマーケットです。
元々は後志管内で店舗を展開していたのですが、2000年以降は札幌市内にも店舗を拡大していました。
現在は札幌、小樽、余市を中心に13店舗を展開しているそうです。
その特徴は大手スーパーとは全く違うマーケティング戦略です。
店員が積極的にお客さんと会話することで細かいニーズを拾っていく「地域超密着」を基本として、大手スーパーとは別の観点でお客さんの満足度を高めていこうという戦略ですね。
その最大の特徴は、新聞折込チラシをはじめとする薄利多売戦略を取らないことです。
チラシを出さないスーパーのチェーン店なんて、私はここ以外に知りません。
それでも売上を伸ばせたのは、ひとえに価格以外の価値で勝負しているからだと思います。
2011年度におけるスーパーチェーンシガの売上高は105億円ですから、この戦略はある程度成功していたと言えますね。
ちなみにこうした戦略は、社長である志賀治夫氏によるものだそうです。この方は早稲田大学の院卒らしく、チェーンストア理論について一家言持っている方みたいですね。
大学院で学んだ理論を実践して成果を出しているのであれば、非常にかっこいいです。やっぱり徹底して理論を学んだ人は現場でも活躍できるんですね。
しかしそんなスーパーも、結局はアークスグループに買収されてしまうのですから、消費増税の影響は想像以上に甚大だったということですね。
事業取得で従業員はどうなる?
アークスが「スーパーチェーンシガ」の事業を取得することで基本合意したと発表したのが、1月6日のことです。
実際の事業取得は2016年2月を目処に行われるのだとか。
気になる店名や雇用についても基本路線が報じられていました。
それによれば、アークスは事業と店舗を取得するものの、当面は店名を変える意思もなく、現在雇用中の従業員についても引き続き雇用を継続するとのことです。
表面的には重要員や利用者に影響がなさそうに見えます。
とはいえ、変わる部分もかなりあるようです。
今後は折込チラシが登場する?
アークスは「スーパーチェーンシガ」が否定していた「商品仕入れを一括で行う方針」を採用すると言っています。
さらに経営効率を高める方策を導入するつもりのようです。
となると、今後は折込チラシやポイントカードといった販売戦略を導入する可能性が高いと思います。
大資本のスーパーしかできない薄利多売戦略です。
おそらく「スーパーチェーンシガ」の特色はどんどん失われていき、最後にはアークスの他の店舗と大差ない扱いになるのではないでしょうか。
店名だけに老舗スーパーの名残がある、ということになっても不思議ではありません。
まあ、少々悲観的すぎる見方かもしれませんね。そもそもこういうスーパーの統廃合は資本主義経済からすれば当然の流れなのでしょうけど、特色ある地域密着型スーパーが消えるのはちょっと寂しいですね。
おわりに
かつて志賀治夫社長は、2005年の時点で次のように言っていました。
「いずれ消費税は8%、10%へと上がる。小売業は卸やメーカーに頼るのではなく、儲けを出す仕組みを今のうちにやらないと厳しい。売上げを追う商売は終わった。体力勝負もない、薄利多売もだめ」
まさにこの予想通り、スーパーには厳しい時代が到来しているようです。
しかし今回の事業買収を見ると、新しい「儲けを出す仕組み」づくりは上手くいかなかったのかもしれません。あるいは当面の運営資金を確保できなかったのか。いずれにせよ事前計画に狂いが生じたのは間違いなさそうです。
消費増税を創意工夫で乗り切ろうとした地方の老舗スーパーが消えていく現状に、なんとも暗澹たる気持ちにさせられます。
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