夜のニュースをチェックしていたところ、道警が警察官を懲戒免職にしたというニュースが流れていました。
どうやら虚偽の交通違反事件をでっち上げて、自分の手柄にしていたみたいです。
私の住む道南地方の森警察署に勤務する巡査長がこんなことをしていたなんて、大変衝撃的でした。
何より気になったのが、警察官が自分の手柄を作るために犯罪をでっち上げていたということです。
これは言い換えれば、警察官にも事実上のノルマのようなものがあることを示唆しています。
このニュースについて詳しく紹介します。
事件の経緯
まず今回懲戒免職になったのは、森警察署に勤務する28歳の巡査長です(調べればすぐに実名は出てきますが、当ブログではプライバシーのために伏せておきます)。
容疑者には、2015年7月と9月に、シートベルト着用義務違反者を取り締まったという虚偽の書類(署名あり)を作成した容疑がかかっていました。
これは刑法156条の虚偽有印公文書作成罪に該当します。法定刑は「1年以上10年以下の懲役」ですね。
この件によって容疑者は11月に逮捕されていたのですが、本日12月18日付けでついに懲戒免職になったというわけです。
なお、容疑者には他に31件ほど同様の捏造をしたとして追起訴されていますし、さらに余罪が7件ほどあると見られているとのこと。虚偽の違反で取り締まられた被害者は20人を超えると報じられています。
違反していない人物に架空の交通違反事件をでっち上げているわけですから、当然その嘘で反則点を取られる被害者というべき市民がいるわけですね。
交通違反をでっち上げるなんてのは、違反行為の取締りを行う警察官に対する国民の信頼を著しく損ねる行為ですから、懲戒免職は当然だというべきでしょう。
普通に考えても他に選択肢はありません。
問題は容疑者がこのような行為に出た動機です。
容疑者の動機は検挙ノルマ達成のため?
容疑者は取り調べに対して、次のように供述しているそうです。
「事件や事故の取り扱いが少なく、交通違反を検挙しないと格好がつかなかった」
事件や事故が少ないということは、本来ならば喜ぶべき事態であるはずです。警察官は市民が事件に巻き込まれたり、事故を起こしたりしないように日々活動しているのですからね。
ところがそういう喜ぶべき事態に対して、巡査長が不満を持っていたわけです。
「検挙しなければ格好がつかない」という言い方をしているのですから、これは森警察署内部で検挙数が多いほど評価される風潮ができ上がっていることを意味していると私は考えます。
まるで検挙数に民間企業のようなノルマがあるかのようです。
容疑者のこの供述が事実であるならば、問題は一人の警察官の暴走に留まりません。
警察組織自体に構造的な欠陥があるとすら言えるかもしれません。
警察組織のノルマと成果主義には構造的欠陥がある
既に述べたように、警察組織が目標とするところは、事件や事故が起こらないようにすることです。
ところが、ここに民間企業のごとき成果主義=ノルマを導入すると、仕事を真面目にすればするほど治安が良くなって取締対象が少なくなりノルマ達成が困難になるという逆説が起こってしまいます。
だから今回のような「虚偽の違反行為でっち上げ」事件が起こるのです。
警察のような治安維持組織と成果主義の組み合わせは、明らかな矛盾を引き起こします。
治安維持組織が民営化できない=警察官が公務員なのもこれが理由です。
取締り数に対してノルマを課したり、検挙数そのものを評価対象にするのは、不当逮捕や虚偽報告を組織的に奨励するようなものなのです。
にもかかわらず、現場警察官には検挙数が評価される風潮があることが、今回の容疑者の供述によって露呈しました。
これは警察官の不祥事というレベルの話ではなく、警察組織の構造上の欠陥が白日の下に晒されたとの同じことなのです。
この事件を切っ掛けに、現場警察官の意識や警察組織の評価対象を変えていかなければ、今後も第二第三の事件が発生してくると思います。
おわりに
そもそも警察組織として一番評価されるべきなのは、事件や事故の発生数が少ないことであるべきです。治安維持組織にとって最良なのは、問題を予防することですからね。
現在の刑法理論が刑罰の目的をあくまでも「犯罪予防」に置いているという事実を、もっとしっかり認識すべきだと思います。
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