
札幌市中央区宮の森のマンション駐車場で発生した事件について、容疑者や被害者の詳細な情報が入ってきました。
また、犯行現場の場所や犯行動機なども徐々に報じられています。
いったい容疑者はどんな人物で、どんな動機から犯行に及んだのでしょうか。
容疑者はどんな人物?
今回逮捕されたのは、鎌田哲博容疑者です。
当初の報道では80代とされていましたが、正確には81歳みたいですね。
年齢を考えれば当然ですが、現在は無職と報じられています。
おそらく仕事を定年退職して、現在は年金生活をしていたのでしょうね。
事件現場となった札幌市中央区宮の森4の5にあるマンション「朝日プラザ宮の森」です。
宮の森というと札幌市内の高級住宅街という印象でしたが、4丁目あたりは普通の住宅も多いみたいですね。
特に裕福な家庭というわけでもないと思います。
容疑者はこのマンションで、同じく80代の妻と、43歳の長女倫子さんと3人で暮らしていたそうです。
長女ということですから、おそらく他にも子供がいて現在は独立しているのでしょうね。
この長女が今回の事件の被害者となったみたいです。
長女の年齢を考えると、容疑者が37歳の頃の子供ですから、夫妻にとってかなり遅くにできた子供になります。
普通に考えたら可愛くて仕方がなかったでしょうね。
しかしこの長女は、今から十数年前に病気になってしまい、両親が世話をする状態になっていたそうです。
十数年前というと、すでに容疑者は70歳近い年齢なわけで、おそらく定年退職して年金生活に入っていたはずです。
その状態で病気の娘の世話をするというのは、経済的にもかなり負担が大きかったと思います。
それでも高齢者の両親が娘を10年以上も養い続けたということは、やはり遅くにできた娘なので愛情が強かったのでしょう。
そして、そんな娘に対して今回のような事件を起こしてしまったのですから、よほど強い動機があったのだと推測できます。
犯人の動機は?
報道によれば、容疑者は次のように供述しているそうです。
「長女は十数年前に病気になり、自宅で世話をしていた。自分たち夫婦は高齢で将来、面倒を見ることができないと思った」
つまり、病気の娘の将来を悲観したため、今回の犯行に出たということですね。
何の切っ掛けもなく突然こういう行動に出るとは考えられないので、おそらく自分の体調に異常が出るなどの「老化」を自覚させられる事柄があったのでしょう。
そうして自分たちが後何年生きられるか、自分たちがいなくなってから長女はどうやって暮らしていけばいいのかと考えたときに、悲惨な未来しか想像できなかったのだと思います。
そうした絶望感が今回の犯行に繋がったということでしょうね。
前回の記事でも書きましたが、数日前に函館で起こった、病気の息子の将来を悲観した父親による事件と同じような構造です。
あくまでも娘の身を案じてこういう行動に出てしまったところに、この事件の悲しさがあります。
おわりに
こうした事件から見えてくるのは、少なくとも日本の社会福祉に対して多くの人が悲観的であるということです。
病気などで働けなくなっている人が、面倒を見てくれる人がいなくなったときに生活してくための手段がない。
少なくとも、こういった事件を起こしてしまう人たちは、このように考えているのでしょうね。
逆に言えば、こういった悲しい事件を世の中からなくすためには、病気で働けなくなった人が将来にわたって一人で生きていけるだけの福祉制度を整える必要がありそうです。
「最良の刑事政策は最良の教育政策」なんて言葉を昔聞いたことがあります。
犯罪対策は厳罰化よりも諸々の社会政策の方が重要となることを端的に表した言葉なのですが、さしずめ今回のような事件なら「最良の福祉政策こそが最良の刑事政策」といったところでしょうか。
色々と考えさせられます。